2013年11月28日
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三百字小説『みんな剥げちゃう』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 B君は模型を作った。

 しかし、評価されなかった。

 「せめて塗装ぐらいしようね」

 B君は塗装した。

 ちょっと評価された。

 B君は嬉しかった。

 もっと評価されたかったB君は大量の塗料を厚塗りした。

 しかし、評価されなかった。模型の微妙な凹凸が全部塗料に埋まって消えてしまったからだ。

 やけになったB君は模型を叩いた。

 塗料が少し剥げた。

 すると評価が上がった。「使い込んだ雰囲気がよく出ている模型だ」

 もっと評価されたかったB君は塗料を全部剥がした。

 しかし、評価されなかった。

 「せめて塗装ぐらいしようね」

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦